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えぇ、松本良順先生には何度かお会いしました。
どんな感じの方だったかですか?
そぉですねぇ、、うーん『豪快』な方、、ですかねぇ?
あたしなんかが他人様の事を、どうのこうのと言えた義理じゃありませんけど、あの頃の良順先生には、やっぱり『豪快』って言葉が合う気がします。
えぇ、失礼承知で言わせて貰えば、『お医者様』それも将軍様の脈取りまでされた『お偉いお医者様』には全然見えませんでしたよ。
ある日、ふらっと離れにみえられて、
「よぉ、ばぁさん!沖田は奥かい?」
って言いながら、名前も言わずにいきなりあがろうとされるですよ。
もぉびっくりして、必死で止めましたよぉ。
親方からも言われてましたけど、『新選組の沖田』の命を狙っている人達がいる事ぐらい、あたしでも知ってましたからねぇ。
「沖田なんて人はいません!」
「おぃおぃ!勘違いしてるんじゃねぇよ!?」
なんてねぇ、もぅ押し問答ですよぉ。
そうこぅしているうちにねぇ、親方が騒ぎを聞き付けて、若い衆を二人ばかり連れて、母屋から駆け付けて来てくれました。
そして、相手を見るなり
「先生!良順先生じゃありませんか!」
本当、お恥ずかしい話ですけど、混乱していたんでしょうねぇ。
「りょうじゅん、、せんせい、、りょうじゅん先生、、」
頭の中で、二、三度繰り返してみて、ようやく眼の前の人が、『松本良順先生』だってわかりましたよ。
そりゃもちろん、先生のお名前は聞いてましたよ。
でもねぇ、どうしても頭の中で思っていた先生の印象と合わなかったんですよ。
幕府の中でも、かなり偉い方と聞いていましたし、先生の紹介で来られていたお医者さま、確か、お弟子さんと聞いた覚えがありますが、その方は本当に生真面目な方でしたから、そのお師匠さんは、もっと、こう威厳があって、、みたいな勝手な思い込みがあったんですねぇ。
「先生!お越しになる時は、こっちにぃお声をかけてくださいって、、」
「そぉだっけかぁ?」
なんてねぇ、さらっと受け流して、さしもの平五郎親方も形無しって感じでしたよぉ。
で、良順先生ときたら、
「まぁ、そぉゆぅ訳だから、上がらせて貰うぜ?」
なぁんて言いながら、ひょいと上がって、さっさと奥に行ってしまうんですよぉ。
本当に、偉い方って感じの方じゃありませんでしたよ。
これが、松本良順先生との出会いでした。
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