良順先生 その二

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間にあった遠慮がねぇ、少ぉしだけ、無くなった気がしましたよ。 それまではねぇ、あたし の方は沖田さんに話し掛ける時には 「沖田さん」 って話し掛けていたんですけど、沖田さんが、あたしに話し掛ける時は、 「すいません」 とか 「申し訳ありませんが、、、」 とか、なんだか本当に他人行儀でしたよ。 まぁ話し始めると、すぐに気さくな口調になるですけどねぇ。 あぁ、、でも、、、んん、、あっ、いえねぇ、、ふと思っんですけどねぇ もしかしたら、沖田さんは、あたしに何て声を掛けたらいいのか、わからなかったのかな? なんてねぇ。 一旦しゃべり始めたら、軽口ばぁっかり。 それでいて、どうでもいいような事で考え込んでみたり、、。 本当、なりばかり大きいのに、心根は子供みたいな人でしたよ。 まぁ、いいきっかけを作って下さった、、って所は先生には、ちょっと感謝してますよ。 えぇ、ちょっと、、ちょっとですよぉ。 「さぁてっと、、そろそろだな」 沖田さんとのお話が一段落したらしく、先生は、ご自分の膝の辺りを、ポンっと軽く叩くと身軽に立ち上がられました。 「、、先生、、」 やっぱり淋しかったんだと思います。 部屋を出ようとしていた先生にかけた声は、、いつもより弱々しかった気がします。 「ん?」 先生は足を止めて、顔を沖田さんの方に向けないまま、応じられました。 「先生、、また、、」 「沖田ぁ、、、ウナギの話、、忘れんな?」 「、、はい、っ」 「いい返事だ、、楽しみにしてろ?特上なのを食わしてやるから、な?」 先生の声は、とっても、えぇ、とっても優しい声でしたよぉ。 心なしか、沖田さんの表情も明るくなった気がしましたよ。 「はいっ!先生、お気を付けて!」 「じゃあな」 軽く片手を挙げて、先生は出て行かれました。
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