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間にあった遠慮がねぇ、少ぉしだけ、無くなった気がしましたよ。
それまではねぇ、あたし の方は沖田さんに話し掛ける時には
「沖田さん」
って話し掛けていたんですけど、沖田さんが、あたしに話し掛ける時は、
「すいません」
とか
「申し訳ありませんが、、、」
とか、なんだか本当に他人行儀でしたよ。
まぁ話し始めると、すぐに気さくな口調になるですけどねぇ。
あぁ、、でも、、、んん、、あっ、いえねぇ、、ふと思っんですけどねぇ
もしかしたら、沖田さんは、あたしに何て声を掛けたらいいのか、わからなかったのかな?
なんてねぇ。
一旦しゃべり始めたら、軽口ばぁっかり。
それでいて、どうでもいいような事で考え込んでみたり、、。
本当、なりばかり大きいのに、心根は子供みたいな人でしたよ。
まぁ、いいきっかけを作って下さった、、って所は先生には、ちょっと感謝してますよ。
えぇ、ちょっと、、ちょっとですよぉ。
「さぁてっと、、そろそろだな」
沖田さんとのお話が一段落したらしく、先生は、ご自分の膝の辺りを、ポンっと軽く叩くと身軽に立ち上がられました。
「、、先生、、」
やっぱり淋しかったんだと思います。
部屋を出ようとしていた先生にかけた声は、、いつもより弱々しかった気がします。
「ん?」
先生は足を止めて、顔を沖田さんの方に向けないまま、応じられました。
「先生、、また、、」
「沖田ぁ、、、ウナギの話、、忘れんな?」
「、、はい、っ」
「いい返事だ、、楽しみにしてろ?特上なのを食わしてやるから、な?」
先生の声は、とっても、えぇ、とっても優しい声でしたよぉ。
心なしか、沖田さんの表情も明るくなった気がしましたよ。
「はいっ!先生、お気を付けて!」
「じゃあな」
軽く片手を挙げて、先生は出て行かれました。
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