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しばらく歩いているとカサっと草群の中から物音がして、翔太はとっさに草群に身をかがめた。
『ちょ……なんだよ。恐ェよ……』
すると見たこともない虫のようなものが、羽を広げて飛び立っていった。
『なんだあれ……虫か?』
ボケーッと虫らしき生物を見送っていると、物凄い勢いで翔太の上を誰かが跨いでいった。
『うわっっ……何だ今の!』
一瞬の出来事で頭がパニックになってしまった。身を起こし、人らしきモノが行った方向を見てみると、遠くの方でぼんやりと人間が走ってるのが見える。
『人か? お……おーい!』
翔太が人間に向かって声を掛けると、そいつは足を止めないまま振り向き、何か言っている。
「──!!──!!」
『あぁ!? 聞こえねーよぉ!!』
すると今度は後ろからガサガサと音がし、槍のような物が翔太の脇腹を、ほんの少しだけかすめた。
『いて……。ったく今度はなんだよ』
「ちっ……外したか」
草むらの方から声が聞こえ、翔太はその方向を見る。
『ん? なに!?』
「人間め……貴様には人質になってもらう」
ガッと腕を掴まれた翔太は、その腕の主を見てギョッとした。
なんと見た目は人間だが、自分たちと決定的に違う部分があった。
そう、鳥のような立派な翼が生えていたのだ。
唖然として言葉が出ない翔太。
するとその時
「~♪~♪」
翔太のケータイが鳴った。
バッと身を起こし周りを見ると、いつもと同じ世界が、そこに広がっていた。
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