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「嬉しいくせに」
「はぁ?うるせーよ玩具のくせに」
「玩具は別に関係ないだろ…」
俺はミンクから視線を逸らした。エイドの玩具なのは、しょうがないんだ。バレちゃったんだから…
ふと腕時計に目をやると、もう昼休みが終わろうとしていた。
「おい、放課後来いよ」
「無理だよ…エイドのところに行かなきゃいけないから」
「嫌なら断りゃいーのに。お前満更でもないんじゃねぇの?」
……ミンクはエイドが俺の正体を知ってる事を聞かされてないみたいだ。エイドはあの約束だけはちゃんと守っている。
「…ミンクには分からない」
俺はぼそっと呟き屋上を後にした。
「ンだよそれ…馬鹿じゃねーの」
小さくミンクがそう言ったのが聞こえた。俺は走って教室に戻る。
馬鹿じゃない。俺は死にたくないんだ。ただ、人間になりたいだけ…
エイドは生徒会長のくせに仕事以外の約束を守らない奴で有名だ。約束で自分の時間や行動を制限されるのが嫌いだって前に話していた。
エイドが俺にした「俺のモノになれば誰にも言わない」と言う約束は守られている。俺はエイドの言うことに否定しても結局は聞いているし、エイドもまだ約束を破っていない。
つまり俺が約束を破ったら、エイドは確実に俺を軍に引き渡す事をするだろう。
あいつに生かされてるなんて…屈辱だ。
呪いは軍があって多少の人が殺されても無くならないようにできている。だけど国も軍もそれに気づいていない。殺して減らせば良いなんて…おかしいのに。
それでも軍はあるから、俺はエイドの束縛に従わなきゃいけない。
「……馬鹿なんかじゃない…」
俺は歯を食いしばって教室までの長い廊下を一人突っ走った。
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