手段

5/5
前へ
/78ページ
次へ
 帰り途中、どちらも話そうとしなかった。ミンクは何か真面目に考えてるみたいだったけど、俺は恥ずかしくて。 「家…そこ」 「分かった」  ミンクが玄関の前で俺を下ろす。 「有難う」 「…お前さぁ」 「なに?」  ミンクが鋭い目で俺を見る。 「……何でもねぇわ」 「何だよ、気になるじゃん」  俺がミンクの顔を覗き込むと、ミンクはばっと顔を逸らした。  何だよまじで、嫌な態度だな。まぁ送ってもらえたからどうでもいいけど。 「じゃ」  俺は軽く手を挙げミンクに手を振り、ゆっくり玄関まで行った。 「明日は休めよ、エフ」  ミンクが叫んだ。俺は振り返って軽く微笑む。 「休まないよ」  ミンクは一瞬だけ顔を赤くした。俺はそのまま家に入った。 「おかえりなさい!遅かったのね、お兄ちゃん」 「ただいま。ごめんなメリィ、今ご飯作るから」 「うん、あたし手伝うよ!」  メリィは俺の手を握り笑顔で言った。  メリィは俺の唯一の兄妹だ。素直で可愛くて、俺は今までメリィに支えられてなんとかきたみたいなものだった。だから絶対一人にしたくないんだ。  ミンクのお蔭で腰の痛みも少し引けたから、メリィに手伝ってもらい俺は手早く晩御飯を作った。 「できた」 「やったー!美味しそう」 「食べようか」 「うん!」  二人でテーブルに並んで座り、ご飯を食べる。 「美味しい!」  メリィが俺を見て満面笑顔で言った。 「良かった」  俺も笑顔で返す。  この一時が一番落ち着く。学校であった嫌なこと全て忘れるくらいだ。  エイドから場所を聞いたら、ミンクを誘おう…  そんなことを考え、一日が過ぎていった。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加