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子猫をダンボールに戻して立ち上がろうとした時、いきなり後ろからミンクに抱き寄せられた。
「ちょ──!」
「やっぱり…お前スプリアウスなんだな」
「…お前っ」
バレた…!
スプリアウスには普段は薄れていて見えないが、絶対に消えない痣が左耳の後ろの首筋にある。ミンクはそれを知っていたみたいだ。でも普通は誰も知らない。誰も知らないし、痣は力を発揮しないと浮き上がらない。
力使ってなかったのに何で…
「力使ってなかったと思って油断したろ」
ミンクがにやりと笑った。俺はその一言ではっとした。
「……スプリアウス」
俺はミンクの左耳に目をやった。耳の後ろの痣を見透かすように。ミンクは嬉しそうに口を緩める。
「ご名答。さすが普通の奴とは見る目が違うな」
違った…こいつは俺の運命の相手じゃなかった。自分の本当の名前を持ったスプリアウスはすぐ近くにいるとは限らないみたいだ。一生出会わないで死んでしまう事も多いみたいだし…
「お前も相手を探しているのか」
「あぁ。こんな厄介な力があると動物にも安易に触れられないからな」
どこか寂しそうに呟きミンクは手のひらにふっと息を吹きかけた。さーっと一瞬水が飛び散る。
水属性…それで俺に子猫を温めさせたのか。
「猫…好きなの?」
「動物は可愛い」
「ふぅん…」
こいつ、案外良い奴なのかもしれないな。近づきずらい外見はスプリアウスだという事を隠すためか…
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