カゴの外の月

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カゴの外の月

青白く、ぼんやりと 辺りを照らす、月。 何より綺麗で、 何より幻想的。 月の側に行ったら、自分も優しく輝ける。 一緒に、優しく辺りを照らすことが出来る。 いつも、そう思っていた。 思うだけだと、思っていた。 小さく開い開いた扉。 いつもは、開くことの無い、重い扉。 今は、体をねじ込めば、外へ出られるかもしれない。 果てしなく広い、大地。 果てしなく高い、大空。 最初で、最後かもしれないチャンス。 いつも、優しく微笑んでくれる月の元へ。 ・・・ 急な変化に、戸惑った。 たじろいだ。 でも、迷ってはいられない。 時間が経つとあいつの時間。 力強く、ギラギラと辺りを焦がす、太陽。 何より眩しくて、何より熱い。 あいつの側に行ったら、燃えてしまうだろう。 あいつも、空のどこかに、住んでいる。 ・・・ 大丈夫、大丈夫! 月はあんなに近くにいるじゃないか。 今、扉から体を出せば、すぐそこに。 飛ぶ練習だって、毎日やっていた。 側なら、優しい月が守ってくれる。 一緒なら、あいつだって、怖くない。 振り切るように決心し、扉の隙間へ体をもぐりこませた。 扉の外へ体を出すと、カゴはバランスを崩して、傾いた。
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