カゴの外の月

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このままだと、落ちちゃうな。 まずは、あの木へ。 月よりも、ちょっと手前。 ここからだと、少し距離がある。 その木を目指して飛び立った。 頬で感じる、風を切る感触。 翼で感じる、空をつかむ感触。 目で感じる、流れていく景色。 全てが新鮮で、全てが魅力的。 夢中で翼を動かして、あっという間に目指した木に到着してしまった。 なんて、素敵な世界だろう。 なぜ、今まで知ることが出来なかったんだろう。 辺りを見回しながら、悔しく思った。 どこへでも、行ける。 この状況に酔いしれるばかりだった。 キィキィキィ・・・カシャンッ 不意に、金属音が耳に入った。 音のするほうをみると、自分が今まで入っていた 小さな、小さな、カゴが揺れていた。 そして、自分が出てきた扉の隙間は、完全に閉じてしまっていた。 もう、戻れない。 一瞬、頭によぎった。 でも、関係ない。 もう、戻らない。 僕は、どこへだっていけるんだもの。 こんな広い世界に、立っているんだもの。 一人で、立っているんだもの。 一人で・・・。 急に、すごく、なぜか、不安になった。 月に!そうだ。月に・・・ そう思って、空を見上げた。 月は、優しい光で、こちらを照らしてくれている。 カゴから見ていた月、「そのまま」だった。
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