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皆の言葉が消え、静寂が空間を包んだ。何だこの静けさは? 僕は不味い事でも言ってしまったのか? でも言った言葉は取り消せない。僕は何のフォローを入れる事無く、原図作業に戻った。
「じゃあ、塚本さんは、私が絵里ちゃん見たいな服着たら歩いてくれる」
突如、経理の和泉さんは笑いながら言った。
「歩きますよ」
僕が胸を張って頷くと周囲からドッと笑いが起きたのだ。皆、和泉さんのゴスロリ姿を想像したみたいだ。確かに何時も高そうなブランドの服を着ている和泉さんの姿からすると想像も出来ない程の凄い格好だった。僕も一緒になって笑っていると村瀬さんが僕の服を引っ張って、微笑みながら小さく囁いたのだ。
「今度一緒に歩いて下さいね」
笑いで渦巻く中、誰にも気付かれる事なく発した彼女の弾む言葉の意味をどう捕らえて良いのか分からず、僕は彼女の首から下げられたシルバーのネックレスを見詰めながら小さく頷く事しか出来なかったのだ。
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