走馬灯

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 決して死ぬのが怖くなった訳ではない。しかし、この決断が本当に正しいのか今の僕には判断するだけの生命力がなかったのだ。 「・・・」  何故だろう、二人で楽しく過ごした時の事や、喧嘩した時の事を思い出す。これが良く言われる走馬灯なのだろうか? 凄く長い時間が経った気がする。でも実際は一分も経っていないのだろう。この空間の静けさと、この走馬灯見たいなモノが時間軸を壊し、きっと時の流れを緩やかにさせたんだ。  瞼が鉛を乗せられたみたいに重い。それでも必死で開こうとするけど、瞳に映る世界は白く靄が掛かっていて歪んでいた。  思考がままならない。そろそろ意識が無くなるのだろう。僕の魂はこの身から離れて、きっと来世を幸せに絵里と生きるはずだ。  僕は床に倒れこんだ絵里を抱き抱え、髪の毛をそっと掻き揚げて優しく見詰めた。  きっと来世でもこの声も、この目も、この顔立ちも全て覚えている。必ず絵里を探し出せる。そして何より絵里の人生は現世より幸せで、美しく輝いた世界が待っているはずだ。  でも本当にこれで良いのか? このまま僕達は来世に希望を託して良いのか?  困惑するなか、僕は突如、絵里の言葉をふっと思い出したのだ。
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