夏の終わり

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 しかし、いつもこの様な記事を見たり聞いたりして思うのだが、女の移り気には驚かされる。この間までは、イングランドのサッカー選手に日本の女は夢中だった筈なのに、今では韓国の俳優に夢中なのだから。なんて女は怖い生き物なのだろう。芸能人や有名人も人気を保つ為に必死な様だ。  僕がそんな記事に目を奪われていると、電車は荻窪駅に着いたみたいだ。僕は電車を降り、西口の改札からルミネ側の階段を下って、飲食店から出される汚水の臭いが少し漂う商店街に在るコンビニに立ち寄って、お弁当とお茶を買って会社に戻ったのだ。        ☆  日が傾き、夏の夕暮れが誘う時間。今日と言う一日が何事も無く静かに過ぎていく。  納品ラッシュで忙しかったこの夏も、あの大作が終了した事で夏の納品祭は幕を閉じたのだ。  納品を終えた僕はこの先どうするか考えていた。以前社長にはこの作品が終わったら辞めると言っていたのだが、制作部の現状は一向に進展を向かえる訳でもなく、いつも人手不足の状態に変わりはなかった。  僕が入社した頃は僕を入れて六人居た制作部も今では僕を入れて三人。制作部のデスクも寂しく空席が目立っていた。こんな状況では辞めれるはずが無い。僕はお人好し過ぎるのか? 別に会社に義理が有る訳じゃないけど、何時も辞めるタイミングを逃していたのだ。
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