2.弱き紅蓮の片鱗

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正直どうしようもない。 肝心のグレイ&フィシュナは眠り、リーヤ&ジェイガは時の歪みに帰ったまま。 唯一使える魔法といったら、物体移動の魔法のみ。魔法無効化(マジックキャンセル)も無の限界突破(ゼロニアスオーバーロード)も不完全で使いこなせていない。 話の通じる相手でもない。 これは食べ物か?といった状態で、ルナの下半身はお口の中だ。海蛇も悩んでいるらしい。 が、やはり腹は減っているらしく、 パクン 「ルナー!」 飲み込んだ。咀嚼もせずに一気に嚥下した。今頃ルナは食道を通り、胃に入ったところだろう。 ハルトは叫ぶ。 「ルナを返せー!」 それも虚しく、海蛇は波をたて、海へ潜ろうとした。 「待て!待てよ!ルナを……ルナを返せ!」 自分一人の状況。 「返せって言ってるんだ……」 常に一人しか居なかったら。 「返せ……」 誰も助けてくれなかったら。 「ルナを……」 この状況が少年を駆り立てる。 ドクン! この鼓動が少年の力の源となる。 脳裏に浮かぶ紅蓮。 それが形作るイメージ。 それは剣。 「返せーーーーー!!!!!!!!」 ハルトは無意識の内に腕を振っていた。 身の丈程もある紅蓮の大剣が、海蛇の身体を裂いた。 瞬間、それは霧散したが、それは見間違うはずもなく、破壊を司る剣だった。 ――カタストロフィ。
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