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正直どうしようもない。
肝心のグレイ&フィシュナは眠り、リーヤ&ジェイガは時の歪みに帰ったまま。
唯一使える魔法といったら、物体移動の魔法のみ。魔法無効化(マジックキャンセル)も無の限界突破(ゼロニアスオーバーロード)も不完全で使いこなせていない。
話の通じる相手でもない。
これは食べ物か?といった状態で、ルナの下半身はお口の中だ。海蛇も悩んでいるらしい。
が、やはり腹は減っているらしく、
パクン
「ルナー!」
飲み込んだ。咀嚼もせずに一気に嚥下した。今頃ルナは食道を通り、胃に入ったところだろう。
ハルトは叫ぶ。
「ルナを返せー!」
それも虚しく、海蛇は波をたて、海へ潜ろうとした。
「待て!待てよ!ルナを……ルナを返せ!」
自分一人の状況。
「返せって言ってるんだ……」
常に一人しか居なかったら。
「返せ……」
誰も助けてくれなかったら。
「ルナを……」
この状況が少年を駆り立てる。
ドクン!
この鼓動が少年の力の源となる。
脳裏に浮かぶ紅蓮。
それが形作るイメージ。
それは剣。
「返せーーーーー!!!!!!!!」
ハルトは無意識の内に腕を振っていた。
身の丈程もある紅蓮の大剣が、海蛇の身体を裂いた。
瞬間、それは霧散したが、それは見間違うはずもなく、破壊を司る剣だった。
――カタストロフィ。
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