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「はぁ、はぁ、死ぬかと思った……」
どうにか上がってくることができたハルト。濡れた身体は放っておいても乾くため、今再優先すべき事項は、
「ルナ~」
ルナの誤解を解くことだった。
すっかりむくれて顔を向けようとしない。ハルトは近付きがたい雰囲気に駆られながらも、ルナの方へ歩を進めた。
が、
「うわっ!」
運悪く、ハルトは甲板に躓いてしまった。
バランスを失い、ハルトは……
何かあったのかと、振り向いたルナを押し倒した。
向かい合う二人。
顔が近い。
ルナは自らが感じていた不機嫌を忘れ、ほんのりと顔を赤らめた。ハルトの顔も紅潮している。
お互いの感情が一致している二人だ。
この状況をチャンスと言わず何と言う!
幸いグレイ、フィシュナは眠っている……ってか気絶か?
「ルナ……」
「ハルト……」
そういえば、まともに唇を重ねたことなどなかった。事故や偶然、成り行き。
たまにはいいかな、ルナの脳裏に響く言葉。
ルナは目を閉じ、ハルトを待った。
やはりこうゆう時は男がリードするものだ、と思う。だって女の子だもん!
自分を待つルナの姿は、とてつもなく可愛かった。
ハルトはゆっくりと腕を曲げていき、呼吸を調えながら、ゆっくりと近付く。
ゆっくりと、ゆっくりと。
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