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…ぁかり、行くよ」
「え?どこ行くの?」
「ブランゼールにバニラを買いに行くの」
「それ、どこ?」
私ははるかと一緒に駅にいた。
右手に切符を持って汽車を待っていた。
少し土の匂いがする。
鉄の匂い?
「こっちだよ」
はるかに呼ばれて、ブラウンの汽車に乗る。
座席からのお日様の匂いが心地よい。
客車のなかは木の匂いとお日様の匂いに包まれていた。
「リブランタンで乗り換えて、ブランゼールに行くの」
「バニラ?」
「そう、ブランゼールのバニラがいるの」
「ルクソールのじゃダメなの?」
「ブランゼールじゃなきゃダメなんだって」
「夢を叶えるのも大変だね」
夕焼けは未だに続いている。
うとうとと眠気を誘っていた。
「あんた達、ブランゼールに行くのかい?」
隣の席の老人が声をかける。
「はい」
はるかは透き通った返事を返した。
「セゾンの猫さんだね?」
「やっと会えました」
「私も若い頃に頼まれたもんだよ」
「おじいちゃんもですか?」
「願いを叶えるまでに5年もかかったもんさ」
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