夕焼けの電車にて…

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おじいちゃんは皮のベストとお揃いの帽子がよく似合っていた。 気さくに話した。 客車の電灯が、灯りと共に揺れていた。 窓の外から雨の匂いがした。 「ルールーの街はいつも雨じゃからな」 ルールーの街からは黒い服の女の人が乗ってきた。 「セゾンの猫は魔女の猫よ。気をつけて」 女の人は一言言って通り過ぎた。 黒いベールで顔は見えなかった。 ただ、雨の香りがした。 夕焼けの街をいくつか通り過ぎた。 おじいちゃんはいつの間にか居なくなっていて、椅子に小さなシミが残っていた。 少しチョコレートの香りが残っていた。
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