機械人形

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 私は人形。    だが、ただの人形ではない。  木でできた、機械人形とやらだ。    私の主人が言うには確か、『現代科学と偶然が何重にも折り重なって出来た科学の神秘』が、私なのだそうだ。    ちなみに、主人と言うのは私を作った制作者の事。    面と向かっては言えないが、正直自慢の主人だ。人間で言う、父親みたいな存在。これも、面と向かって言うには恥ずかしいが。    とりあえず、私は主人の言う事ならなんでもきく。一応感情はあるので、『嫌』な頼みは断ったりするが……。    言い直そう、大体は何でもきく。そうゆう風にプログラムされているんだそうだ。        今もこれから、私は主人の呼び出しで、少し無駄に長い気がするを廊下を歩き、意気揚々と言うにはあまりに機械的な雰囲気で、主人の部屋に向かっている。    そうこうしている内に、主人の部屋の前についた。私はいつものように「コンコン」とドアを叩く。  私と同じ、木造のドアから、どこか小気味のいいノック音が響く。    それから、いつものように、ワンテンポ遅れて 「おぉ、お前か……入ってこい」 と、これもまたいつものように、主人の優しい声が部屋の中から響いてきた。    私はこの声が大好きだ。私はこの言葉の、優しい余韻に浸りつつも、主人が空けるワンテンポの間より、少し短めの間を空けて、部屋に入る。    すると、ドアを開けた瞬間、むわっと、壁の棚に立ててある薬品のようなものの匂いが、部屋から漏れだし、私の鼻にあたる部位を刺激する。  その匂いの奥にいた主人は、いつもの優しくて穏やかで、それでいて強さを秘めた表情とは違う、険しい表情で、この埃っぽい部屋に趣味よくマッチしていて、いささかガタがき始めている、愛用のボロボロベッドに座っていた。 「これから大事な話をする そこに座ってくれないか? 」  主人は、自分の座っている場所のちょうど数センチ横を指差し、そう言った。    表情とは裏腹に、声は優しいままだ。
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