桜の樹の旅

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(待って!!お願い!!僕の事を教えて!!どんな事でもいい!!教えて!) 幸福の樹は、ありったけの声で叫んだ。 だが、月は出てくる事はなかった・・。 (・・僕は・・一体誰なの?誰と約束したの?・・何も、解らないよ・・) 幸福の樹は、とても小さな呟きを洩らしました。 だが・・、そんな呟きは誰の耳にも届く事はなかったのです。 幸福の樹は、歩き続けました。 誰とも解らぬ約束を果たす為に・・。 大雨が降ろうとも・・ 大雪が降ろうとも・・ 嵐が来ようとも・・ 台風が来ようとも・・ 幸福の樹は、歩き続けました。 何処にいるかも解らぬ相手の為に・・。 こうして、幸福の樹はこの草原に辿り着いたのです。 そして、春夏秋冬問わず、咲き続けたのです。 約束の為に・・。 居場所を教える為に・・。・・自分の事を知る為に。 永遠に咲き続けたのです。 (・・教えて・・。僕は一体誰なの?どうして・・?僕は誰を待っているの? 何時まで咲き続ければいいの?僕が待っている人は来るの・・? 教えて・・・誰か・・) 幸福の樹は、風に吹かれピンク色の花を地に落とすのでした。 其れは・・まるで、幸福の樹が泣いている様でした・・・。
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