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そこには誰もいなかった。
5年前と変わらない思い出のままの家、部屋。家具の位置さえも何一つ変わらない。
「………。」
クロは他人の家に入るかのように申し訳なさそうなおぼつかない足つきで室内に進み、
懐かしさに満ち溢れた椅子や窓に触れて涙を流した。
その光景にどうしていいかわからず、ここまで付いて来てくれたミミとニャミはただそわそわとして小声で会話をする。
『ねぇニャミちゃん…神って今日出かけてたっけ?』
『いや、明かりだってついてたんだから家にいると思ってここに連れてきたんだけど…』
『外食にでも行ったのかな?』
『あれ…ミミちゃん。いい香りしない?』
『あ…する。する!!この匂い…』
二人の会話から『いい香り』と聞こえるやいなや、クロは鼻に意識を集中させた。
「…シチュー……」
台所に兄さんがいるんじゃないかと思い扉に目を向けたその時だった。
「誰だ?飯時に勝手に入ってき―
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