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我々は山奥の洋館で困り果てていた。
一つは窓を叩きつける豪雨と、それによって電話線が切れてしまったこと。
もう一つは――洋館の所有者、犬山豪三郎が何者かの手によって殺害されたことだった。
「銀田一先生」
事件のあらましをメモし終わった手帳を胸ポケットにしまい終わったところに、助手の小林君が声をかけてきた。
「何かね、小林君」
「僕たち、どうなっちゃうんですかね」
平素から持ち歩いているお守りをそわそわと触りながら、小林君は尋ねた。
その愚問に私は憐れみを隠しきれなかった。
山奥の洋館、豪雨、殺人……導かれるものは一つしかないではないか。
しかし私が口を開くよりも早く、発言した者がいた。
「この中に殺人犯がいるんだろ……そんなやつと一緒にいれるか!」
そう言って、犬山家の跡取り長男の靖夫は二階の自室に引っ込んでしまった。
「死亡フラグだな、小林君」
「死亡フラグですね、先生」
一時間後、夕飯の時刻になっても降りて来ないので、家政婦の春日が部屋に呼びに行ったところ、靖夫が首を絞められて死んでいるのが発見された。
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