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「どうなってんだ……」
震える声で、次男の忠雄は言った。
「犯人はいったい、誰なんだよっ!」
この瞬間を私は待っていた。
「犯人はこの中にいる!」
「だ、誰なんだ、それは!」
「……わかりません。こういう場面では言うべきかと思っただけです」
忠雄はがっかりしたように肩を落とす。
「なあ先生。俺たち、生きて山を降りれるのかな」
「わかりません」
私がそう言うと、彼はポケットから一枚の写真を取り出す。そこには笑顔の若い女性が写っている。
「彼女さんですか」
「俺、この旅行が終わったらプロポーズするんだ。それで、二人で幸せになるんだ」
忠雄ははにかみながら言うと、「ちょっとトイレ」とリビングを後にした。
「なあ、小林君」
「はい、死亡フラグですね」
案の定、彼はトイレの便器に頭を突っ込んで死んだ。
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