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「誰が犯人なの……」
震える声で、豪三郎の妻芳子は言う。
リビングに戻った我々は、重大な問題に直面していた。犯人について、だ。
「わかりません」
私は首を振った。
「山中、あなたね? あなた、主人に借金してたじゃない」
今まで蚊帳の外であった、執事の山中は突然の疑惑に首を振って否定した。
「ま、まさかっ。私ではありません!」
「疑わしいわ。この前も主人に罵倒されてたじゃない。それに私、見たわ。主人が殺される前、二階に向かうあなたの姿を……」
山中は苦々しげに唇を噛んだ。
「……かよ」
「え?」
「悪いかよ! 俺が豪三郎を殺したさ! あんな死んで当然のやつ、殺して何が悪いっ!」
山中はそう言うと、泣き崩れた。
肩を震わせて泣くその姿は凶悪な殺人鬼などではなく、ただの哀れな一人の男だった。
私と小林君は、芳子の頼みで彼をロープでぐるぐる巻きにして逃げられないようにし、地下室に放り込んだ。
山中は芳子に怨めしそうな視線を送る。
「くっくっく。俺を閉じ込めたところで平和は戻らない。第二、第三の殺人犯が表れ――」
そこで私は扉を閉めた。
「どこの大魔王ですか、あれ」
「頭がおかしくなってるのね」
小林君と芳子は大きく溜め息をついた。
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