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「もう来やがった...」
前崎が暗く謙虚な顔で言った。
その時場の空気が固まった気がしたが、俺は気にせず続けた。
「やばいぞ..逃げ場が無い...」
俺達の居場所から逃げるとしても、後方から来てる化け物の視界に写るのは避けられない。
仮に逃げ出しても、
殺されるだろう。
それだけは絶対させるわけにはいかねぇな。
俺は右のポケットに手を突っ込むと、一つの鉄の刃を取り出した。
カシャッ。
そう。
折り畳みナイフだ。
今頼れる物が、
この一握りの鉄の刃しか無い。
皆が驚く表情をしている中、一人だけ俺に話しかけてくれる温もりがあった。
「テル...それ...ナイフ..?」
恵だった。
「あぁ...あいにくこれしか武器が無くてな..」
俺は恵の目を見ずに答えた。
「そのナイフで...何するの..?」
決まってるじゃないか。
無論。
あの化け物の足止めだ。
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