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「くそっ、俺の愛車が…」
怒濤の金切り声を上げる青年の腕時計が11時を回ったと事を刻む。
天気は曇りがかかった今一つの夜空。
他の車など通る気配の無い道路。
そこで青年は一人呟いていた。
「…こんなところでパンクおまけにエンストかよ…ついてないぜ全く…」
そういうと、開いていたボンネットを力強く閉める。
そして間も措かずに、パンクしたタイヤに足を叩き付ける。
そんな行動で生まれた協奏曲が響くと、車の後方から複数名の人影あった。
そして、人影が吐息を漏らすと、他の人影も笑みとはとれない顔を浮かべている。
やがて一人が言った。
「おいおい、テル…お前の中古の相棒のお調子が悪いようだが?」
人影の一人が言った。
「あ~、まじかよ!こんな所で…」
また人影の一人が呟いた。
「前崎、中古は余計だ…それと…ラッキーな事に、噂の場所はこの近くだぞ…」
「本当か!?」
「本当!?」
「緊張するなぁ…」
幾多の人影も次々に口走る。
「ああ…じゃあ…これを持っとけ…」
青年は、車のアタッシュボードから、懐中電灯を数個持ち出し、手渡した。
「じゃあ…行くぞ」
複数名の人影達は、人気の無い道路を渡り、薄気味悪い闇が滴る森へ、駆け出した。
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