出逢いは売買から始まる

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日本人…だろうか? 確信が持てない。 なぜなら日本人特有の、のっぺりした顔ではなく、欧州人のようにメリハリがある顔であった。 肩にかかるかかからないかくらいの長さの髪。 その色は、銀に近い。 白髪というよりは、元々そんな色なんだろう。 そこで、ヨーロッパの人だろう。 そう検討をつける。 その男は、黒いスーツに身を包んでいた。 こんな田舎の漁村にいるような人間には到底見えない。 『この村の代表は誰だ?話がしたいんだ』 何をいきなり、と文句をつけたくなるが、誰も言わなかった。 男の圧倒的な迫力に、みな気圧されていたからだ。 『誰って言われてもなぁ』 『あぁ、こんな小さな村に代表ってなぁ』 『‐そうか。なら、みなさんに話しましょうか。手早く用件を言いますと、私はここを買い取りにきました』 『…』 『…』 『…』 みな、口を閉ざした。 思いもよらぬ男の言葉に、思考が停止したのだ。 .
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