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『は、はい…?』
バックミラー越しに窺える表情は、以前仏頂面。
しかし、眼光鋭い切れ長の目が、しっかりと私を見据えている。
足を組み、その膝の上に左腕をのせ手の上に顔をのせている。
王様姿勢(キングポーズ)
これは、始まるな。
王様劇場(キングシアター)が。
『違う所に向かえ。今すぐだ』
予想通りの命令。
『しかし、今回ばかりは…。お祖父様、いや会長の直令ですので』
‐ガンッ💥
助手席のシートが蹴られる。
より眼光が増し、不機嫌が露になる。
数分間、重い沈黙が続く。
『おい、黒沼』
『はい』
『この間も俺の行動の責任を取らされたらしいな』
『は、私の至らぬ所以ですので』
‐ガンッ💥
『今日はジジイに花を持たせてやる。いずれ本当に菊の花を持たせてやるがな』
そう言うと横になった。
あの方に似て優しい人になった。
自然と笑みがこぼれてしまう。
その時、目の前に何かが落ちてきた。
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