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麗子は3時間 入り浸り そろそろ帰ると告げ扉まで赴[オモム]く
俺は最後の足掻[アガ]きのように
扉に手を掛けている麗子を呼び止めた
『麗子…』
麗子は肩越しに俺と双眸[ソウボウ]を合わせた
俺は片手を挙げて手を2、3回振った
そんな俺を見て少し名残惜しそうに手を振り返してくれた
『またな』
麗子は頷いて扉を開き また振り返る
「家で待ってるからね」
と一言残し微笑んだ後 扉を閉めた
〝バイバイ〟って言わねぇから安心しろ
帰りたいよ…
麗子と同棲している家へ
閉ざされた扉の向こうで麗子は今何を想っているのだろう?
麗子は毎日来てくれた
忙しくても あんまり居られなくても
それでも俺は嬉しかった
独りは淋しい…
でも病院に患者さんや医者や看護婦が居ても
そんな人達と殊更[コトサラ]仲良くするつもりなんてなかった
心臓が急に痛くなるのも
もう嫌だ!!
限界だ…死にたくない 死にたくない シニタクナイ
生きて麗子に何か1つでもしてやりたい
今まで麗子に何1つしてあげられなかった
見ていきたい麗子の笑顔と新しい服
年をとって一緒に笑い合っていたい
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