6月・泣くなみだ。

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僕は下げていた頭をかなりの速度で上げて、開いたドアを見た。 ドアと地面の間に大きな鞄が置かれた。 僕の不安と期待は脳裏を活発に働かせた。 (お願いだ、中3だけは……中3だけは避けてくれ) 何度も必死に願った。 願い続けていると、ドアと地面の間に動くものを見つけた。 ヒールの高いサンダルを履いた足が見えた。 (大人っぽい……イヤイヤ、決めつけるにはまた早い。最近の中学生は皆履くさ!) 自分を必死に励まし続けた。 日除けに黒いカバーシールが貼られているドアの窓に彼女の影が映る。 足の爪先から脳天まで緊張が走った。 果たして結果は……。 顔が見えるとほぼ同時に、母親が言葉を発した。 「あんたと同じ年とは想えないわ。綺麗でしょ?彼女。」 「おっ……同い年!!?」 こんな非日常的な現実をどう受け止めろと言うのだろうか。 僕はこれからどうすればいいのだろうか。 真っ白な頭の中は、しばらく色を取り戻さなかった。 これが僕と彼女の非日常的暮らし、通称“非グラシ”が始まった。
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