Prologue~序章

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(━━━━おい、またあいつだぜ?) (━━━━黄色い猿が何かほざいてる。) (━━━━ばーか。お前みたいな奴は死ねばよかったんだよ。あいつらみたいにお前の親父に殺されてな。) …響く銃声。 …頭がぼぅっとして、それが夢だったと気付くのに多少の間を必要とした。 ━━━━ひどく不愉快だった。 あの頃の夢を見たのはいつぶりだろう。わからないくらいに久しく見ていなかった。 腕時計は正午一歩手前の時刻。珍しく寝すぎた。おかげで体が変に痛い…。 ダグラス・リシュリューは枕の下から拳銃(M1911A1)を抜き出すと、ベッドから起き上がってテーブルの上のホルスターに差し込んだ。ぼんやり握り慣れた感触を手中から離すと、次に携帯電話を手にとった。 …留守電に伝言が入っている。 再生して耳に当てた。 『よお、ダグ。まだ寝てるのか?お前にしては珍しいじゃないか。ところで、昨日の仕事…相変わらずお前は最高だ。昨日のお前の働きのおかげでしばらくは奴等もまともな動きはできないだろう。また追って電話する。』 折り返し電話を、とも思ったが…どうやらその必要はないらしい。 携帯電話をテーブルに戻し、ダグラスはテレビをつけてから煙草を一本出して火をつけた。 肺に煙を取り込む度に、先端では火種が煌々と燃える。 『━━━━では、最近の頻発する銃撃事件は何らかの関連性を持つとお考えですか?』 テレビでは、昨日の仕事のことについて司会者がコメンテーターに訊いていた。 『━━━━ジュリアーニJr.氏が市長を辞めて4年になりますが、これほど銃撃事件が頻発するようになったのは2年ほど前からです。私の筋で入手した情報によりますと、どうやら組織間の抗争が原因のようです。』 なかなか情報が早いじゃないか。 感心しつつ、ダグラスは携帯電話を取ってある番号に掛けた。 画面には『クロスドッグ』の表示。 (クロスドッグだ。) しゃがれた、聞き慣れた声には覇気がない。 「リッチ、ダグラスです。」 (おう、ダグか。留守電は聞いたか?) 「もちろん。」 昼飯でも摂っているのだろうか、もごもご言いながら少しの間を置き、話し始めた。 (昨日はまた一段と働いてくれたな。おかげで奴等もほとんど壊滅に近い。ついでにうちのファミリーに入ってくれりゃあ報酬も上乗せするんだがな。)
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