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父が入院してしばらくは毎日検査の繰り返しであった
父の病気は国の難病指定を受けていて自己負担は少なかったが症例がすくなく
ある意味、大学病院ではモルモットかのように扱われていた
私はそれが腹立たしくてしょうがなかったのを覚えている
爆弾を抱えた人は精神的に弱っていく
父も例外ではなかった
普段何がおきても笑い飛ばす父が今回は笑顔どころか悲壮感すら漂うほどになっていた
周りが笑わなければ・・・
家族みんながそう思っていただろう
そんなある日父の手術の日取りが決まり残すところ3日と迫った頃
私は日も落ちた時間に病室を訪れた
父はテレビを見ていた
しかし視線はテレビに向いてはいるが違ったように見えた
「お~い」私が声をかけた
・・・・
反応なし
「え~?」(沖縄では人に声をかける時よく用いられる言葉)
「ん?」
父はやっと気づいた
「え~(おぃ)やぁ(あんた)目が死んでたぜ」
私が言うと
「だぁるか?(そうか?)」
父は答えた・・・
父「遠いのに無理するな、忙しいだろ」
私「大丈夫だよ」
父「・・・そか」
私「どんなぁか?調子は」
父「ん・・・あまりよくないなぁ」
私「しわさんけ(心配すんな)すぐよくなるよ」
父はテレビに顔を向けたままうなずいた
そんな無気力な父を今まで見たことがなかった
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