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「やぁ」
その町に着いたのは、夕暮れ時だった。
私は歩きながら宿を探していた。
しかし、地図すら用意してこなかったのはいささか失敗した。
ふと、少し先の農園の道端に男の子が立っている。
私は宿はないかと聞きたい一心で声をかけた。
「やぁ」
すると男の子はパッとこちらに振り向き、まじまじと私を見つめた。
・・
私も彼女を見つめた。
年は10歳にもみたないだろう。
頭の毛はなぜかきれいに剃られていて、はじめは男の子だと思った程に整端な顔立ちの女の子だ。
少女は恐る恐る聞いてきた。
「おじさん、どこからきたの?」
「東京からだよ」
私は世間話でもする様に、サラッと言った。
が、それがいけなかったようだ。
私の一言を聞いた瞬間、少女の顔がこわ張った。
「ひ...っ」
そう小さく叫ぶと同時に、一目散に逃げていった。
私は子供に嫌われる事はめったに無いため、面食らってしまった。
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