ある町の風景

2/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「やぁ」 その町に着いたのは、夕暮れ時だった。 私は歩きながら宿を探していた。 しかし、地図すら用意してこなかったのはいささか失敗した。 ふと、少し先の農園の道端に男の子が立っている。 私は宿はないかと聞きたい一心で声をかけた。 「やぁ」 すると男の子はパッとこちらに振り向き、まじまじと私を見つめた。   ・・ 私も彼女を見つめた。 年は10歳にもみたないだろう。 頭の毛はなぜかきれいに剃られていて、はじめは男の子だと思った程に整端な顔立ちの女の子だ。 少女は恐る恐る聞いてきた。 「おじさん、どこからきたの?」 「東京からだよ」 私は世間話でもする様に、サラッと言った。 が、それがいけなかったようだ。 私の一言を聞いた瞬間、少女の顔がこわ張った。 「ひ...っ」 そう小さく叫ぶと同時に、一目散に逃げていった。 私は子供に嫌われる事はめったに無いため、面食らってしまった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!