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学園都市『麻帆良』の街の一角の、新聞配達屋。
その店の店頭に佇む、否、右足を小刻みに上下させる少女がいた。
その少女は携帯の画面に映る時間を見ては溜め息をつき、再び右足を小刻みに上下させる。
「…………」
その少女の姿は、その、きっとこの世に鬼なる者がいるとすれば、裸足で逃げ出してしまうような迫力があって、
「………………」
この世の全ての怒りとか憤怒とかを煮詰めたかのような、すんごいオーラを放っていて、
「…………………………………………………………………」
つまり、何が言いたいのかと言うと、
「お」
この少女、
「そ」
神楽坂明日菜は、
「い!!!!!!!!」
―――怒っていました。
「いやースマンスマン。ちょっと寝過ごしぐばはぁっ!」
のらりくらりと現れた愚か者へと、自慢の蹴りが綺麗に鳩尾にヒット。
「ちょっと?」
「い、いやかなりふぎゃっ!」
「かなり~~~~?!
ふざけんじゃないわよ。こっちは一時間も前からこーーーんなに寒い中! アンタを待ってたのよ! それをのらりくらり、何の反省の色も無しに……
美も恥じらう乙女の時間と私の青春を返せー!」
「び、美を恥じらってどうする………」
「うるさーーい!」
余計な発言に威力とコンボ数が増していく。
そんな光景を慣れた物と見ているのか、配達屋から出て来た年老いた女性は、特別何も言わなかった。
「あら十夜君じゃない!
今日は珍しくお休みかと思ったんだけど」
「コイツが休むなんて事有り得ませんよ。
台風が来ても新聞配達しようとするヤツなんですから」
それもそうね、とにこやかに笑う。
明日菜に現在進行形で踏まれている哀れな少年、空儀十夜は思った。
昔から思ってたけど、今更だけど、女って怖ぇのな………
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