剣を継ぐ日

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踏まれたままの顔をずらし、空を見上げてみる。 特に思う事はない、いつも通りの青空だ。 その青空の余りの平和さが今は憎い。 だからそんな、何気ない一言を憎々しく呟いた。 「もう少し良い事あったっていいのに……」 ―――何も知らずに。 「遅れたのはホントに悪かったよ。ちと寝坊しちまってさ。 ………でもなんか今日はいつも以上に機嫌悪くねぇか? なんか、オレが遅刻した事以外でキレてるような………」 「間接的にアンタに原因があんのよっ」 ふんっと、明日菜はそっぽを向いてしまう。 あの後、明日菜の女王様プレげふんげふん! 堪え難き拷問から抜け出したオレはご機嫌斜めの親友に問い質していた。 しかし、明日菜は見ての通り“コレ”である。 突然機嫌が悪くなったりするのは、まぁ、年頃の女の子にはありがちだが、いくらなんでも今朝の女王―――それはもういいか。 とにかく、今の眼前の少女はとっても理不尽なのであった。 うぬー、皆目見当が着かん。 そこへ、困った顔をした新聞配達のおばさんがやってきた。 「実はね、今朝ここを高畑先生が通ったのよ」 納得。 「あーそうかぁ、それでオレが遅れちまったから高畑先生と青春出来なかった、と」 うんうんと首を上下させる。 そんなオレの様子に肩をぷるぷるさせる少女。 あかん、ふざけすぎた。 慌てて、少し疑問に思ったことを明日菜に―――冷静じゃん―――吹っ掛けてみた。 「で、でもそれだったら別に高畑先生と一緒してても良かったんじゃないかな? メールぐらいくれりゃ、そのぐらい察せるぜ?」 その疑問の解答は溜息であった。 呆れた様な仕草でバックから何かを投げ付けてきた―――割と速球で。 「うおっ!?」 眼前迫る何かを右手でキャッチ。 いきなりだったので多少力んで掴んだが、ん?なんだこの感触? 「……………」 投げ付けられたソレを見る。 掌にスッポリ、という程の大きさではないソレの正体は、 「……………………………………………あすな」 正体は! 「…………麻婆おにぎりって、なんでさ………」 ガクンと膝ごと心も落っこちそうになった。
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