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「し、仕方ないじゃない!木乃香からメールが来て、アンタが朝飯食べてないっていうから、急いで1番近いコンビニまで全力で走って、お弁当のコーナーからわしづかみで買ってきたんだから!」
凹んだオレを見て、バタバタと明日菜が慌てる。
うん、仕方がないんだヨ………
明日菜はオレのことを思って買ってきてくれだんから………
だから、麻婆おにぎりの麻婆が冷蔵庫の中のモノと同一であるのも仕方がないことなんだヨ………
しくしくしくしく。
あの神父ホントに何者。
しくしくしくしく。
さめざめと涙を流すオレに業を煮やしたか、明日菜は若干怒りのイントネーションを踏んだ言葉を放つ。
「………そ、そんなに嫌なら食べなきゃいいじゃない!」
ふんっ、とまたもやそっぽを向いてしまう明日菜。
どっちのもオレが悪いが、今のは明らかにオレが悪い。
………あれ、なんか今、言葉がメビウスしてたような。
いやいや、それはいい。
今は明日菜にちゃんと謝らなきゃ。
「スマン、明日菜。せっかく買って来てくれたってのに、オレ嫌がっちまったりして……」
「嫌がってたのは否定しないの!?」
鋭いツッコミ有り難う。
「でも!せっかく親友が買って来てくれたんだ。
これで食べないのは明日菜に失礼ってもんだろ」
びりっ、とおにぎりを包む袋を破る。
中から出て来た――――ナニカ、すんごい香りとすんごい形状に、心の中でグラウンド半周分ほど引いたが。
「………す、好きにしたら?
どうなっても知らないわよ!?」
多分心配してくれているであろう、幼少の時からの親友に悪戯っ子の様な笑みを返してやる。
「あぁ、盛大に好きにしてやる」
釈然としなそうな明日菜の顔を尻目に、オレは掌に君臨した魔物へと噛り付いた――――――――
「………い、生きてる?」
「―――――――――」
へんじがない。
ただのしかばねようだ。たぶん。
――――――――合掌。
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