剣を継ぐ日

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麻帆良学園中等部区域。 「ひぃで~…………まらひたがキリキリふる……」 「あらら、そら災難やったわなー」 「だから食べなきゃいいって言ったのに………アンタはそういう所だけは昔から変わんないわよねぇ」 「うるへー」 舌を口から惜しみなくさらけ出し、情けなくヘタレている、現代に珍しく髪を染めず、ピアスや指輪といった装飾品を付けていない、幼さが僅かに残る顔付きの、意思の強そうな少年。 空儀十夜。 その様子に苦笑しながらすいすいとローラースケートでコンクリートの大地を滑り、やってくる風を長い黒髪で受け流す、大和撫子を体現させたかのような穏やかな少女。 近衛木乃香。 呆れた口調で、先程の惨事と目の前のヘタレを、オッドアイの眼で見た、鈴の付いた髪飾りで同じく長髪のオレンジを二つに結わえた強気な少女。 神楽坂明日菜。 彼らは今、広大な学園都市の通学路を進んでいた。 ………もっとも、麻帆良という場所そのものが、一種の市であり、幼・小・中・高・大とおおよそすべての年代層が存在するため、学園にもたらされた教育の場のスペースにはどこもかしこも半端がない。 まぁ、何が言いたいのかと言うと、 ぶっちゃけ生徒以外の通行人なんて、滅多にいないのであった。 故に通学路とは名ばかり、はっきり言えばここは学校の敷地内と同列なのだ。 簡単にいえば、この場所も学校なのである。 ただここから、学校別、男女別に別れるため、一応の体裁を取っている、というのがこの学園の、頭が激しくビックバンしている、孫との間に覆せない遺伝子の革命が起きた1番偉い人の言い分、もとい逃げ口上である。 とかなんとか、麻帆良のちょっとした雑学をしている内に分かれ道はやってきた。 自然、オレ達の歩みは分かたれる。 「んじゃ、オレ行くわ」 何気ない挨拶を、オレは何気なく行った。 それを、 「………待ってん!」 何故か、止められた。 「へ………?」 訝しんだ顔で、オレを呼び止めた少女―――木乃香を見た。 少女は、一瞬驚いたような顔をした後、3つほど?を出して、突如、!を出してバックの中から、大変かわいらしい小包を差し出した。 「ぉ、お弁当。とー君いっつもお金の事気にして、お昼ぜんぜん食べんとちゃう? せやから、ウチ作ってみたんやけど………いらへんかな?」
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