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わーわーぎゃーぎゃー
手作り弁当の存在意義について熱い討論を交わす男と女。
そんな彼らを、正確には女の方を見て少々不満を抱く若き大和撫子。
周りを気にせず目の前に集中することが出来るのは、いわば彼らの長年培ってきたアビリティ、もとい良い根性であった。
そんな彼らだから―――もう周りを見渡しても誰もいない事とかに気付くのが遅かった。
「………あれ~?明日菜、とー君、なんか周り静かとちゃう?」
「「…………え?」」
ようやく木乃香がそれに気付き、全員が周りを見渡す。
―――半径5メートル以内に生体反応無し―――
なんとなく、十夜は知り合いのロボ娘(本人から聞いた話ではガイノイドと言っていた)なら、こんなこと言うんじゃないかなー、と軽目の現実逃避をして、
「―――――――――――――遅刻だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
今は遠い学びやへとマッハの速さで飛び出した。
「あっ、とー君!?」
「あぁああ木乃香ありがと弁当、美味しく頂いたら洗って返すからああああ…………!!!」
風もびっくりの速度で大地を疾走していく、場合が場合じゃなかったら、陸上部からスカウトの嵐が飛んでいただろうに。
「ほら木乃香!急がないと私達も遅刻するわよっ!」
「う、うん!」
こちら女子中2年の二人も校舎へと走る。
この時点で、もう10メートルの差があった。
疾走の中、少女――――木乃香は、不安の色を顔に宿していた。
それに気が付き、親友が話し掛ける。
「ゴメンね木乃香、いい雰囲気のところを私がぶち壊しにしちゃって……怒ってる?」
その問いに、少女は首を横に振る。
「ううん、そういうんちゃうの。
………さっきな、お弁当渡すとき、なんやろ、ごっつ不安に感じたんよ」
「不安って………木乃香の弁当が美味しくないハズ無いじゃない。
アイツがアンタのお弁当をまずいだなんて言うわけ………」
「それもちゃうの。
………なんや、とー君の顔みたら―――何かわるぅもんが張り付いてたんや」
「…………えっと、話が見えないんだけど」
木乃香の小さな唇が、キュッと締まる。
「とー君にもしかしたら
………悪い事起こるんやないかって………不安になってもうた」
「………木乃香?」
突然の予言、それが真実であることを、まだ誰もこの場にいる二人にも、わかりえなかった―――
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