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当の沢近本人は、
「あり?いない?」
沢近愛理の席はぽっかりと空いていた。
いつもなら傲然不遜の態度で播磨をよく睨みつけているハズなんだが……
そんな素朴な疑問は、すぐに解明された。
「おはよー空儀君!
愛理ちゃんだったら、今日は休みだよ?」
「お。おはよ塚本、そうか休みか……珍しいな」
素朴な疑問を説き明かしてくれたのは沢近の友人である我らがクラスメート、塚本であった。
「やっぱり空儀君もそう思う!?
そーだよねぇ、既成事実だからかな?」
「本人が聞いたらシャイニング・ウィザードでも飛んできそうだな。
………というか、塚本はマジで沢近が既成事実で欠席と考えているのかね」
「違うのかな?既成事実ってヤツじゃないの?」
「オマエは友人を子持ちにさせたいんか」
多分、というか十中八九コイツは既成事実がなんたるかをわかっていない。
わかってないけどなんとなくそうなんじゃないかな~、みたいな考えがコイツな染み込んでいる。
ちなみに大阪とは仲が良い、理由は言わないが。
目の前に塚本がいると知り、急に大量の汗とともに狼狽する播磨。
「あぁああ!?
て、天ま………塚本!?ちょっと待て!
誤解なんだ!コレは深い深い誤解なんだ!!
オレとお嬢の間に、こんな嘘っぱちが存在するワケが………!」
忘れていたが播磨は塚本のことが好きなのである。
こんな焦りに焦った姿を見せられれば、誰だってわかるもんなのだが、
「ダイジョーブ!
私、みんなには言わないでおくから!
安心して播磨君、愛理ちゃんと既成事実でも私、応援してるぞ!」
バキューン、と拳銃の様なポーズをして塚本が播磨を撃つ。
ソレを受けた瞬間、播磨はまるでモノホンの銃に撃たれたかのように空中へと舞っていた。
―――そう、塚本天満というこの少女。
実は、
「(て……天満ちゃん……)」
「うーん………ところで空儀君、既成事実ってなに?」
―――初っ端なから播磨に眼中なんぞなかった。
「げふっ………!!」
大きく空中へと舞った播磨は、そのまま体を後ろへとのけ反り、
「―――もう、ダメぽ」
―――墜ちた。
「おおわぁッ!?
は、播磨!いきなりどうしたんだ!?」
「っつか重いからとっとくどきやがれ!!」
後ろ二人も犠牲に。
「空儀!見てねーで助けてくれよ!」
「へいへい」
とりあえず、朝の教室は一時的な平穏を取り戻したのであった。まる
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