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―――出会いは、結構普通だった気がする―――
俺に両親はいない。
気が付けば既に孤児院にいたって感じかな。
孤児院は寂れた教会で、俺達孤児の世話は一人の神父様がしてくれた。
俺一人が孤児ってワケじゃなかったんだからな。
ともかく、同じ孤児院に住まう同期の少年達、自分より早く孤児院にいた先輩の少年達、自分より後に孤児院にやってきた後輩の少年達。
いずれも、誰もが引き取り手が見つかりぞろぞろと孤児院を去っていった。
―――引き取り手が見付からないヤツが一人、いたけど。
そんなこんなで、俺は神父様が亡くなるまではここに残れることとなったワケだ。
まぁ、その神父様も長く持たなかったんだけど。
ある日、
所々に生々しい傷を残す廃墟と化した、面影の見当たらない教会に懐かしい来客がやってきた。
『ふぉふぉふぉ、久しぶりじゃのぅ』
懐かしい客は、何年か前にここに来た時と変わらぬ姿をしていた。
弾丸のように突起した頭蓋骨、
どこぞの神様のごとく首元まで伸びた両耳、
そう、この老人こそ彼の有名なぬらりひょ―――
『いや違うから、ワシこれでも人間だから』
失敬。彼こそはあの有名な麻帆良学園の最高権力者、
――近衛 近右衛門、その人であった。
『ふぉふぉふぉ、相変わらずじゃのぅおぬしは』
そう言って長く伸びた髭をさする姿を見て、そっちも相変わらずだなぁと思った。
『まぁ、久々に会ってなんなんじゃが………』
どこか勿体振ったような口調で彼はこう言った。
『おぬし、………これからどうするのかな?』
―――これから。
そう、俺は神父様が生きているまでの間はここで暮らそうと決めていた。
他に行く宛てなんかあるワケもない。
……………けれども、神父様は亡くなってしまった……………
孤児院に残っていた僅かな食糧も昨晩、底を着いた。
『ならばワシの所に来る気はないかの?』
近衛爺さんの話は渡りに船だった。
食いつかないハズがない。
それに、俺はこの人の事を信頼している。
悪い事などあるわけがなかった。
二つ返事で言葉を返すとそれでは早速準備しなければのぅ、と言ってどこかへと電話をしていた。
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