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「おい」
「っひゃい!?」
が、少女の声により膠着状態から解き放たれたせいか、情けない声が口から漏れてしまった。
「あ………」
後悔するも後の祭、目の前の少女には既に耳に届いてしまっている。
笑われるだろうか、と思い少し顔を俯かせると、
「ふん、なにをそんなところで突っ立っている。
ジジイに用事があるならば直に来るだろうから、そこのソファーにでも座って待っていろ」
おおよそ女の子がしないような口調で少女が話し掛けてきた。
………ドクンッ。
少女の発した声を耳にして、心臓が跳ねる。
「(な、なんだコレ?)」
始めて味わう感覚に戸惑うも、少女の言う通りにすることにした。
ソファーに座ると、少女と向かい合っている事に気付き何故か顔が真っ赤になる。
な、なんで俺はこんなに顔を真っ赤にしてんだ?
理由もなく顔を赤くするなんておかしいだろッ!
初めての連続に動揺してワケも分からない心情になる。
嗚呼、どうしてしまった俺の体よ。
放っておけば、悶え苦しみながら奇声上げて転げ回りそうな体を全身全霊を懸けて抑え込む。
爺さんにならともかく、この少女の前でそんな無様な醜態を晒したくなどない。
………別に少女以外なら全然オッケーというワケでもないが。
そんな俺の心境など、露知らずの少女は何か机に向かって難しい面相をしていた。
「(うーむ………ちょうどヤツが客が来たとか吐かして場を離れたのは僥倖だったな………
こちらも手詰まりだったところだ。
先に五つ並べられれば勝利、と実にシンプルだがなかなかの知能戦だ、先の先を読みヤツの顔を悲壮に捩曲げてやるのも悪くない、……………が)
………ヤツは何時になったら来るのだ」
はぁ、と少々の溜め息を吹かせる。
「えぇっ!?い、いや別にオレは今来たばかりで………!」
と、誰に聞かせるワケでもなく何気なく呟いたのだがこの少年は過敏に反応してしまったようである。
「む?あぁ、別に尋ねたワケではない。ただの独り言だ、気にするな」
お互い待たされている立場だしな、と付け加えて初対面の少年に言葉を返す。
「そ、そうですか」
少年は妙に緊張した面持ちで私と会話を成り立たせている。
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