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「よかった、風馬、よかった」
いつもは感情をあまり面に出さない母が目に涙を浮かべ僕に抱きついてきた。
「だるいところとか、痛いところなんかないかい?」
術後の経過観察なのだろう紙とペンを持って先生がきいてきた。
「別にないです」
「そう。それならよかった」
そういい病室を後にしようとした先生を僕は呼び止めた。
「先生!」
「なんだい?」
「僕の病気って何なんですか?」
「何を言っているんだい風馬くん。君は駅の階段に躓いて転んだだけだよ」
いかにも、何もないかのようにさらっとうそをついた。
「なんでうそをつくんですか?階段から僕が落ちる前に心臓のあたりに痛みを感じたんです。先生、教えてください」
先生は母と顔を見合わした。
母がコクっと1回頷くと重い口を開き話し出した。
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