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暫くの沈黙…。
不意に男は立ち上がり、ニッコリと笑いかけてきた。
「私は十分に休憩したので行きますね、またいつか合いましょう」
去ろうとする男の背中に僕は自然言葉を投げた。
「あまり休んでないだろ?」
男は相変わらずの表情で振り向いた。
「私は少し歩いては少し休憩したり、たまに走ってみたり寝てみたり、そんな風にこの道を歩いていますから、今回は少しずつなので十分なんですよ」
男はユックリまた僕に近づく。
「この道の名前を貴方は知っていますか?」
問われた事に口を開いたけど言葉にはならなかった。
「あぁ、それさえ見失うほどに疲れていたのですか」
言いながらも男は表情を変えることはなかった。
「この道はね、人生ですよ」
通ってきた道を振り返り僕は小さく頷いた。
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