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そして、真っ赤になったそこに倒れている比呂。そして、もう一人の見知らぬ女。
「……やだぁぁぁぁ!!比呂!!比呂!!」
彼女は、自分のしでかしたことをも忘れて、叫んだ。
「……比呂……比呂……」
もう、息をしない比呂に雅紀は必死に呼びかける。しかし、そんなことで比呂は生き返ったりなどしない。
「――……っ…」
雅紀の瞳からは涙が次々に溢れ出る。
雅紀は、部屋を出て、ふらふらとマンションの屋上へと向かった。――比呂の返り血を拭うこともせずに。
「……ひろ……」
マンションの屋上で虚空を見上げ、彼女は呟く。
空は皮肉にも、雲ひとつない天気であった。
「今逝くからね…」
そう呟くと、雅紀は、其処から軽やかに飛び降りた。
恋愛に執着心の強かった雅紀は、比呂に依存するがあまりに、比呂の存在が消えてしまった今、自らも命を絶つことしかできなかったのである。
雅紀の落ちた先のアスファルトは、まるで、彼女がずっと比呂に送り続けていた封筒のように、真っ赤に染まっていった――。
ね、言ったでしょ、比呂。
比呂は私だけのもの。
私の愛で真っ赤に染まって
ずっと、ずっと一緒に居るの・・・・・・
ずっと、ね。
―end―
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