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「比呂君、最近誰かから恨み買った覚えとか、ある?」
「・・・さぁ。」
比呂は、そう答えると、テーブルにあるコーヒーを口にした。余りにも不快な手紙の内容に鳥肌がたっている。
コーヒーの香りだけが、今のこの現実を忘れさせてくれる、そんな気がしたのだ。
そんな比呂の様子から、それが比呂の身に覚えのないことを推察した涼子は、彼に対する質問を変えた。
「・・・・・・別れて比呂君に未練たらたらの彼女が比呂君に手紙を送ってる、なんてことないかな?比呂君、恋愛に関しては淡白だから、恨み買ってるとか。手紙の文面をみるかぎり、その可能性が高いと思うんだけど。」
涼子の目で見る限り、その手紙の文面は、比呂のことが好きな女性が手紙を送っている、そんな風にしか見られなかったのである。
比呂は、ふと、コーヒーを口に運ぶ手を止めた。
過去の恋愛はすぐに忘れる比呂に心当たりがあったのである。数ヶ月前に別れた彼女。口元にある黒子と笑顔が印象的な女性。割と一人の空間を楽しむことが好きな比呂とは対照的に、人と一緒に過ごす時間を大切にする女性であった。
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