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「なんでもない。」
比呂は、わざと冷静を装ってそう答えた。
二人が帰途につき、比呂がなにげなくポストに目をやったそのときである。
見覚えのある封筒が目に入った。
真っ赤な封筒。
雅紀からの手紙。
比呂は妙な胸騒ぎを覚え、その手紙を開けた。
『比呂・・・やっと気付いてくれたね。
比呂に近づく女は許さない。
比呂は、私だけのもの・・・。』
「まさか…。」
比呂は先ほどのことを思い出す。
ずっと一緒に居た涼子。
まさか、彼女になにかあったのでは…。
自分が知る限り、雅紀はそんなことをするような人間ではないはずだ。しかし、万が一のこともある。比呂は涼子に連絡をとってみることにした。
・・・出ない。
比呂は、自分の想像する嫌な予感が現実のものとならないよう祈りながら、涼子のもとへと急いだ。
涼子の住むマンションの前に着いた比呂は、そこにまた例の封筒が落ちていることに気付いた。中の文面を見た比呂は戸惑いを隠せなかった。
手紙にはこう書いてあったのだ。
『邪魔は排除した。
比呂は私だけのもの・・・
真っ赤な愛に染まって
ずっと、ずっと一緒に居るの・・・』
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