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君の声
俺は会場に立っていた。
[へぇ……]
聞き慣れないメロディを、聞きながらため息をつく。
[つまんない絵ばかりだなぁ…]
自分に正直になれないまま独り言を言う。
[ま…他人に言わせれば俺が賞をとったほうが奇跡なんだろうけど…]
だけど、その日、足を止めたその絵には、何か惹かれる物があった。
[………ふーん]
その絵の作者は俺と同じ高校生で同じ学年。名前からすると、たぶん女だ。
レベルは高いのだが、何か、ピンと来る物がない、すると、隣にいた女子が
[この絵、いいですよねぇ]
[あ…うん]
突然そんな事を聞かれて俺は戸惑った。
彼女は笑顔をで、
[つーか、これ、あたしの絵なんだよね]
[………え?]
[あんたも絵を描くの?
突然聞いてきた。
[お、俺はこの会場に絵を展示してあるけど……]
俺の絵を見たとたん、プッっと笑われた。
[これ描いたのあんたなんだ。なんかそれっぽいよねぇ]
[っぽい?!]
[あんな絵だったら、あたしの絵の方がいいじゃん]
思わず反論しそうになった。
[くぅ……言ってくれるなぁ!]
と、言ったとたん、急に彼女が笑い初めた。
[あははっ、おっかしぃ、あんたみたいのなかなかいないよ]
……これが、俺と彼女の出会いだった……
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