52人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
今日は僕の誕生日。
たとえば今ここで「誕生日おめでとう、もし君が一度だけ過去に戻れるならば、いつにもどるか」と聞かれたとしよう。僕は、きっとこう答えるだろう。
「過去になんてもどりたくないね、僕は早く死にたい。また同じことを繰り返すのにまったくもって意味はないとは思わないか?
今の僕はそこそこの人間関係をもち、そこそこの友情を築き、そこそこの家族愛を育み、そこそこ楽しく、そこそこ苦しく、そこそこの幸福とそこそこの不幸が交差し、そこそこの生活を営むことができていて、それをまんざらでもないと思ってる。
それにもし過去変えることができたとして、何になるというんだ?因は違えど果は同じだろう。過去を改竄したところで僕はいまと変わらず、そこそこの人間関係をもって、そこそこの友情を築いて、そこそこの家族愛を育んで、そこそこ楽しんで、そこそこ苦しんで、そこそこの幸福とそこそこの不幸が交差して、そこそこの生活を営むことができるだろう。したがって、過去に戻ることにはなんの意味もない。
それならば僕は、この忌々しい人生を、早く終えたい。
母さん、僕を生んでくれてありがとう。気の遠くなるような長い長い人生という絶望を与えてくれて、ありがとう。
僕は一生あなたを恨みます。
くそったれ」
もちろん僕にはそんな質疑をするような心友なんていないため、僕は黙ってろうそくの火を吹き消した。
ハッピーバースディ、僕。
最初のコメントを投稿しよう!