・なくしてはいけないもの

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・なくしてはいけないもの

いつの間にか 与えられないものばかり 数えていた   「男になれない自分」 「思うにまかせない剣技」 「得られない沖田先生の心」     ――― (翆月)「惚れて惚れて  大好きなお人が生きて  そこにいてくれはるんやったら  それ以上何も  欲しがったらあかんえ」    ――― 翆月(すいげつ)様の言う通りだ   いつからか もっともっとと 欲しがるばかりになって   与えられているものに 感謝する気持ちを 失くしていた   「善き両親と  兄とに恵まれた幸せ」 「五体無事に生きている幸せ」   そして 外(ほか)の何処でもなく   この国に生まれ   同じ時を生き   「沖田総司という武士に 巡り逢えた幸せ」     その先は 数えればきりがない   どれ程沢山の幸せを 私は沖田先生から頂いた事だろう   その百分の一も返せていない身で 「遠ざけられた 死にたい」とは…   女々しいを通り越して 馬鹿馬鹿しいわ 清三郎っっ!!                         風光る 22巻       渡辺多恵子(小学館)
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