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・・・、あの球を続けて打たれたんじゃな・・・。
ショックは受けたものの、半分は呆れていた。相手の力量と、それを頭では理解できていても、認められなかった自分に。
それから、投手交替を告げられた。
・・・あーあ、また怒られる。
怒られるのは嫌だったけど、僕は納得していた。自分に誇れる球だった。
だから後悔はしていない。けどまぁこれだけやってしまったら怒られても仕方ないな。
「アホ、なんで戻って来るんや、サードにいかんかい。クリーンアップ替えるわけにいかんやろ」
「あ、はい・・・」
「気持ちきらすなや」
「はい」
監督は関西人だ。関西人というのは方言に誇りを持っていて、関東に来ても標準語に直さないという人の方が多いらしい。
「打たれたんだから仕方が無い。気にすんな」
牧原が声を掛けに来た。
ユニホームが見事に泥だらけになっている。さっきマウンドで見た時は気にならなかったが、胸の学校名の刺繍の文字がいくつか泥で見えなくなっている。さっきの打席の時にそうなったのだろう。
僕はなんだかなぐさめられてるような感じがして、情けなかったので何も言い返せなかった。
「ピッチャー花井」
アナウンスが聞こえた。ベンチから出て来た背番号10はさっきの僕みたいにこわばった顔をしてマウンドに上がった。
花井勇次。色が白くて、背も高くない。ユウジは僕の幼馴染みだ。
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