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「はぁ…」
裟弥は水道の蛇口を開けるとため息を漏らした。
(あの笑顔は反則だよ…)
顔を赤らめたまま花瓶の水を取り替える。
このまま教室にもどると晃貴に怪しまれると思い、水道の水をそのまま熱くなった顔にかけた。一気に熱が引いていく気がしてホッとした。
「お前…学校で顔洗うなよな…」
教室に入ると顔にタオルがかかり、手から花瓶が奪われて慌ててタオルを取ると、晃貴が呆れた顔してこちらを見ていた。
「拭け!そのままだと風邪引くから」
晃貴は裟弥に渡したタオルを指差して眉を吊り上げて言った。
「風邪引こうが晃貴には関係ないでしょ」
晃貴から視線を逸らしてしまう。
「関係おおありだっつうの!お前が寝込んだら誰が看病すんだよ!おじさんもおばさんもまだ帰ってこないだろうが。ったく」
いつまでたっても一向に拭こうとしない裟弥に痺れを切らせた晃貴は、裟弥の顔をガシガシと拭き始めた。
「やっ…いだっ痛いよ。ぷはっ!看病なんてしてもらわなくたって一人で平気だもん」
擦られた場所がヒリヒリして本当に痛かった。
「うわっ!可愛くねぇー」
赤くなった頬をさすりながら呟いた。
「かわいい何て言って欲しいわけじゃないもん」
「素直じゃねぇな!」
晃貴は裟弥の頭をポンッと叩いた。
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