2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「さて、じゃあ出掛けようか?」
「…………は?」
水城は、錐の行き成り過ぎる唐突な言葉にそう言うしかなかった。
「何処に?」
「秘密」
錐はいつもこんな感じだから慣れてはいる。
「碧い水を、見に行こう?」
「碧い水って……水は無色透明なモノだろ?」
「行って見れば解るから」
――そして、電車に揺られて一時間半。
会話をしたり黙っていたりを繰り返していた水城と錐だが、頬杖を付いて外の景色を眺めていた水城が、不意に何かに気付いた様に付いていた頬杖を外して、顔を上げた。
「ん? どーしたの、水城」
「行き先って……海だったのか」
「うん、そうだよ。やっと気付いたー?」
「でも、何で」
「君が海を見た事ないって言うから、海の碧い水を見せてあげようと思って」
「錐……」
「もうそろそろ、見えて来るんじゃないかな?」
錐がそう言ったので外を見てみた水城は、
「すげぇ……」
と一言漏らすと、黙って海に見入っていた。
そして、次の駅で電車を降りた二人は、白い砂浜に降り立った。
「ね? 碧い水、でしょう?」
「あぁ……」
錐が問掛けると、水城は素直に頷いた。
それに満足した様に微笑み、錐は言葉を紡ぐ。
「君に、これが見せたかったんだ。この綺麗な海を」
「ありがとな、錐。すげぇ、綺麗だ……」
そう言った水城の横に、錐が座り込む。
「あのさー、水城」
「ん、何だ? 錐」
「これからもオレ達、ずっと親友だよね?」
「…………」
錐の言葉に、水城は目を見開き、驚いた表情をする。
「……水城……?」
返答がない事を不安に思ったのか、錐は水城の名を呼ぶ。
「そんなの、当たり前だろ。……俺達は一生、大親友だ」
「水城……」
錐は、先程の水城の様に目を大きく見開き、そして、微笑んで頷いた。
「うん!」
――それから二人は、暫くの間何も言わず、並んで海を眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!