お気に入りの……

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 ある日、いつもの場所へ行くと、私の前に先客がいた。  その、隠れた様な場所に有るベンチは、暖かい木漏れ日がとても心地良い、私のお気に入りの場所。  だけれども、このベンチに人が座ってる所なんて見た事なかったから、凄くびっくりした。  私と彼の縁が最初に繋がったのは、この時。  彼は、結構カッコイイ顔立ちをしていた。  でも、いつも無表情で、口数も少なくて、余り話が続かないとか何とか言われていて、そんなにモテる方じゃなかった。一寸冷たい感じがするとか言ってる人もいたし。  カッコイイのにもったいないな、と思ったりはしたけど、私は別段そんな事に興味が有る訳じゃなかったから、基本的にどうでも良いと思っていた。  でも、この時に、彼はベンチで寝ていて、その寝顔は可愛らしかった。  それで何とはなしに、彼と話がしたくなった。 だから、彼が起きるまでずっと、ベンチに座っていた。  彼は、目を覚ました時、「……お前、何やってんの?」と聞いて来た。  何故だか私は、不意打ちをくらった気分だった。まさか、話し掛けて来るとは。  でも、それに戸惑いながらも答え、「貴方と話がしてみたいの」と言ったら、彼は「変わってんな、お前」と言って笑いつつも、良いよ、と言ってくれた。  笑った事に、びっくりした。無表情で有名な、彼が。  でも、この時から私と彼は、良くこのベンチで会って、一緒に座って、喋る様になった。  彼が、実は良く笑うし、しかもお喋りな事を知った私は、普段どうして口数少なく無表情なのか聞いてみたら、「人前で話すのが苦手だから」と言っていた。じゃあどうして私の前では素を出してるの、と聞いたら、「……お前といると、安心するし楽しいから……」と、彼にしては珍しく語尾を濁し、顔を赤くし照れ臭そうにしながらそう言った。  私は、そんな彼が突然、とても愛おしく感じた。彼は、きっと不器用な人なのだ、感情を表したりする事に関して。  「私、貴方が好き」彼の顔を見て目を合わせ、するりと口をついて出たのは、本心からの想い。  彼は、驚いた顔をして、でもその後に笑って。 「俺も、お前の事好きだよ」
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